テイクアウトとまちのチカラ Vol.4
2020.05.06いなまち酒場パトローラー、田中章さんの連載第4弾。テイクアウトを続ける日々、思い出したのは幼少期の出前のおこぼれと、就職したての頃に通ったお店の人たちとの温かい記憶。いなまちノスタルジー。
ちょっと昔の話とこれからの話
(早くお店で呑みたい)
伊那は地域外から越してきてくれた人から見ると、
チェーン店ではなく、個店の割合が多いようだ。
ずっと伊那に住んでいる私には
よくわからないのだが、そうらしい。
私は、お店に行って一人呑みすることも好きだ。
何が楽しいって、自分のペースで呑めること。
そして何よりご主人と話をしながら呑めることだ。
また、お店で隣に座った
見知らぬ人と呑むのも楽しい。
お酒好きのバイトのおねえさんと
話をするのもうれしい。
個店て、本当にいい空間だ。
昔の話になるが、まだ就職したての頃、
情のあるお店がたくさんあった。
当時のモスコー(バー)でも、
政子(まさご)寿司でも、
「あきらちゃん、もっと稼ぐようになってから
返してくれればいいからね」と言って、
いつも安くしてくれ、
注文以外のサービス品も付けてくれた。
そのようなお店も閉店となり、
未だに恩を返せない僕がいる。
出前文化も懐かしい。
こんなに、皆がお店で飲むようになったのは、
ここ30年くらいではないだろうか。
昔は家で飲むことが主流で、
外食ということもそうはなかった。
街場の特権なのだが、たまーに出前を取っていた。
お寿司やラーメン、お蕎麦などだ。
お寿司は、お客さんが来た時にたまに取るのだが、
お客さんお寿司食べずに
早く帰らないかなと思っていた。
残れば、子供たちもおこぼれにあずかれる。
スーパーだってなく、小さな商店があり、
総菜や缶詰をちょっと買いに行くという習慣も
街場に住む者の特権だった。
今は、車でスーパーでもコンビニでも
どこへでも行って買うことができる。
すごい世の中だ。
今でも出前をしてくれるお店が近くに何軒かあるし、
ちょっと歩けば昔の商店に近い食料品店もあるし、
総菜屋も肉屋も酒屋もある。
人がたくさん集まらない近くのお店で買い物をし、
テイクアウトだけでなく、
出前も楽しんでみようかと思う、
今日この頃である。
いや、いや、そうじゃない。
新型コロナが早く終息するよう、
それまでテイクアウトと出前でしのぐのだ。
早く、お店で呑みたーい。